昨日(10月3日)付け東京新聞朝刊7面に掲載されたコラム記事(斉藤保伸氏記ーーー当該記事は本文下段を参照)、「シンセサイザー製造活気」というタイトルで、「YMOやスティビー・ワンダーさんなど、世界の著名ミュージシャンが愛する米シンセサイザーメーカーの『モーグ』が経営難を抜け出し、活気を取り戻している。」とある。
同社(モーグミュージック社:Moog Music Inc.)では、従業員を大切にすることを心がけ、ベルトコンベアもなく手作りでシンセサイザーを組み立てている由。同社社長が米国国内生産にこだわる理由は、「生産する楽器に日々、改善を加えることができること」とし、「中国などの海外に工場を移しても人件費削減の影響は小さく、製品の改善がストップすることのほうがマイナスと判断し、国内に製造拠点を置いて経営改革に取り組む」という。同社は非上場企業だが、同社株式の49%を従業員に譲渡し、また、すべての経営情報を開示する経営会議を毎月開催、全従業員で共有、経営の透明性を高めて最近12年の平均売上高は対前年比2割増しで推移しているとのことだ。
世界市場において確立したブランドを持つ企業、モーグミュージック社のような経営スタイルがすべての企業に当てはまるわけではないだろうが、我が国製造業が学びなおす点は多い。あえて、「学びなおす」と記述したが、「従業員を大切にする」、「日々製品に改善を加える」、「従業員持ち株制度」などは、かつて日本企業の特徴を表す言葉であったように思うからだ。
米国のいくつかの州では、時間当たり最低賃金が数年以内に15ドル(1ドル120円換算で1800円/時)となる見通しで、2020年には全国規模で適用する動きが顕在化しているとのことだ。 対する我国は東京地域でも900円強とのこと。 それでもさらなる低賃金を求めてか、海外に製造をゆだねる企業も多い。結果として国内雇用を減らすのみならず、製造技術の流出・喪失にも繋がる。ここでは、企業の在り方を論ずるつもりはないが、日本の製造業の存続と発展の要件をじっくりと考えてみる必要がある。
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